70歳まで働き、100歳まで生きるための50代からの自律的キャリア形成

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経済界からの2つの提言と「改正高年齢者雇用安定法」から見えること

令和の時代になり2019年末から今年にかけて、経営者団体から働く人のキャリアと企業の人材育成に関する以下の2つの提言がありました。

・【提言】(REIWA)モデルの人材育成戦略で人生100年時代の変化を乗り越える
関西経済同友会 人生100年時代委員会 2019年12月

・Society 5.0時代を切り拓く人材の育成
日本経団連 2020年3月17日

これらの資料によると、人生100年時代=「人生の長期化」×「破壊的な変化の時代」の今、以下の2つが必要であるということが共通点です。
・従来からの働き方や人材育成・雇用制度の見直し
・会社依存のキャリア形成から個人主体の自律的キャリ形成の転換

また、生産年齢人口の減少や長寿化に対応して、来年4月から「改正高年齢者雇用安定法(通称:70歳定年法)」(※)が施行されます。
これによりこれからは、企業は自社での雇用延長だけでなく、定年退職後のキャリアの多様化を見据えた支援をすることが、そして働くシニアは自らのキャリアを選択・決断すること、つまり自律的キャリア形成が求められる時代になります。

※「改正高年齢者雇用安定法(通称:70歳定年法)」の概要(2021年4月施行)
70歳までの就業機会の確保のために定年廃止、定年延長、継続雇用制度という従来の雇用確保措置に加え、他社への再就職の実現、フリーランス契約への資金提供、起業支援、社会貢献活動への資金提供という新たな四つの選択肢を、事業主が講ずるべき努力義務として示している。

以上のような環境の変化のなか、70歳まで働き、100年を生きるための私が考える「自律的なキャリア形成のかたち」を、50歳代後半からの自身のキャリア(役職離任、定年退職、転職、副業・兼業)を踏まえて紹介します。

私のキャリア形成の軌跡 55歳以降のシニアのキャリア形成を中心に

組織内での役割の変化に向き合う(図:キャリア形成の軌跡の①)

民間企業での充実した35年間

私は入社後20年間は法人向けシステム営業を、その後15年間は本社マーケティング部門でコンタクトセンターの運営や営業プロセス改革など全社重点施策を担当しました。営業現場の経験を全社施策に反映できるマーケティング部門での仕事は、とてもやりがいのあるものでした。

ひとり親方(部下無し管理職)- 役職定年を機に転職を決意(57歳)

55歳でライン・マネージャーから外れ、その後2年間は「部下無し管理職」として、部門長から任された特定テーマ(業務プロセス改革など)を担当しました。
ラインから外れる辞令を受けた直後は、役職定年の時期がいずれくると分かっていたにもかかわらず「なぜ今 私が・・」という気持ちも湧いてきたのが事実です。特に半年かけて準備した新年度拡販施策のスタート直後、期途中の辞令は、私には大変こたえました。
今から振り返ってみると、結果的には部下に頼らず一人で現場の仕事を遂行できる「おひとり様仕事力(※)」の強化に繋がるきっかけとなったと捉えています。特にその時必要に迫られて覚えたパワーポイントの基本スキルは、その後の私の職業人生に大変役立ちました。そして役職定年を経た57歳の時に、定年(60歳)後を見据えた自分のキャリア(働き方)を考え社外への転職を決意します。理由としては2つあります。1つめ、役職定年後の2年間でA社で自分やりたいことはやりつくした。2つめ、定年後最低65歳まで働き続けたいが、この年齢では関係会社への出向の道は望めない。よって、私はA社以外で働く場所を探そうと考えたのです。

※「おひとり様仕事力」とは
シニアが生き生きと仕事を続ける為の変化対応に必要な基礎能力=「プラットフォーム能力」の1つ(日本人材マネジメント協会(JSHRM)リサーチプロジェクトが提唱)。

転職活動 (5ケ月間の短期決戦)

就職活動を始めるも書類選考が通らず。シニアの転職の難しさを肌で感じる。
入社して35年。初めて書く職務経歴書には大変苦労しました。しかし、それ以上に苦労したのは50代後半という年齢の壁です。書類選考に思う様に通らず、苦労しました。

やってきた偶然のチャンス -商工会議所からの求人情報

そんな中、中小企業の経営者や管理部門スタッフとの面談が主の為、営業所長などのプレインングマネージャーの経験がある人が望ましい(希望年齢50代後半)」というB商工会議所からの求人を発見しました。「自分のビジネス経験を生かした中小企業への支援」に携わりたいと望んでいた私にとって、迷う理由なく挑戦したいと思うものでした。
書類選考は無く直ぐに面接を受け、面接したその日の内に内定を頂きました。幸いな事に、転職活動を始めてから3ケ月間で内定を頂き、その2ケ月後には私は商工会議所で働き始めました。

出向、転籍を経て新たな手ごたえを獲得(図:キャリア形成の軌跡の②)

出向~定年退職~転籍(転職)(58歳~61歳)

厚生労働省委託事業の推進に民間ビジネス経験を活かす

58歳でA社からB商工会議所へ出向し、60歳定年を機にA社から商工会議所に転籍しました(契約社員)。業務内容は、今までの民間ビジネスとは異なる厚生労働省人材開発支援助成金事業(ジョブ・カード制度))の普及促進でした。入所当時は正しい事は書いてあるが、一般人には理解し難い厚生労働省作成のマニュアル(業務取扱要領・助成金リーフレット)を理解するのに悪戦苦闘しました。しかし1年後には、社員の定着や育成に悩む中小企業経営者の前で、その対応策としてのジョブ・カード関連施策(※)を講演するまでに私の理解が深まりました。セミナー参加者から「具体的で分かりやすく助成金制度の意味が初めて理解できた」などの評価を頂きました。

※ジョブ・カード関連施策とは
今まで別々に説明されてきた助成金制度の内容を経営課題である人材育成の解決施策として(三田が)体系的にまとめたもの。

経験を統合し、個人事業主としての新たな一歩(図:キャリア形成の軌跡の③)

2度の転職と副業(個人事業主)(61歳~)

ビジネス経験と資格(キャリアコンサルタント、組織開発)を活かした副業

商工会議所が2018年3月末でジョブ・カード普及事業から撤退したことを受け、翌4月から私は人材派遣会社に転職しました。私には2回目の転職です。
【本業】
当初私は人材派遣会社のC社営業部門で業務の見える化・標準化業務を担当する予定でしたが、その計画は延期になり、現在はC社で就職支援セミナー運営や電話カウンセリグ等キャリアコンサルタントの資格を活かした就労・キャリア形成支援業務を契約社員として担当しています。
【副業】
本業と並行して勤務時間外には、キャリアコンサルタントや組織開発の資格取得を通じて知り合った仲間と研究会を結成し、新しい技能の習得や副業としての中小企業向けのキャリア形成支援ビジネス(キャリア研修、キャリア面談など)を共同で行っています。

まとめ 変幻自在なキャリア形成の第1歩

55歳以降の私のキャリア形成の話は皆さんの参考になりましたでしょうか?プロティアン・キャリアとは、環境の変化に対応して自らから考え主体的に行動し(キャリア自律)、自分自身を柔軟に変化させていく(変幻自在な)キャリア形成のことです。

図:キャリア形成の軌跡(まとめ)

35年間所属していた組織(会社)を飛び出した後の7年で獲得できたものは以下です。
・ジョブ・カード制度とその助成金制度の普及に関する実務の実績
・人材育成への想いは強いがその為のリソース(人、ノウハウ、時間・お金)不足に悩む中小
企業の経営者向けに、自身のビジネス経験を活かした支援実績
・キャリア開発、人材開発、組織開発など「学びの場で知り合った仲間とのネットワーク」
による、今後の副業ビジネスの可能性

まさしく私は、今自らの意志と決断により変幻自在なキャリア形成をし続けていると実感しています。
50歳代のシニアの皆さん、変化を怖がらず、先ずは組織を超えた第一歩を!
キャリアはいつからでも開発可能です。  Be Protean!!

三田 勝彦

三田 勝彦

国家資格 キャリアコンサルタント、組織キャリア開発士、CSCワークショップインストラクター
大手IT企業に35年間勤務し、その間法人向けのシステム営業と全社マーケティング業務を担当。その後東京商工会議所にて、厚生労働省委託業務の「ジョブ・カードを活用した人材開発施策(実践型訓練、職業能力評価基準、セルフ・キャリアドック)」と助成金普及促進業務に従事。
現在は、企業におけるキャリア形成・人材開発・組織開発をテーマにしたコンサルティング、研修講師に従事している。
好きな言葉:A・T・M(明るく 楽しく 前向きに)

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