“子育て”というキャリアの積み方

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子育てを頑張っている・頑張ってきた あなたへ

 目の前のことばかりに目が行っていませんか?もしくは、過去にできなかったことばかりに目が行っていませんか?
 これからの社会で必要な力は、例えば「多様性の理解(多様な個の尊重)」。こうしたことは子育てからも身につけられます。『キャリア=人生』と捉えることができたら、もっともっとあなたらしく、あなたならではの人生の楽しみ方が見えてくるかもしれません。

子育てでキャリアにブレーキはかかるのか

 子育てに関わる産休・育休・時短勤務が自身のキャリアにブレーキをかけているように感じるのはなぜでしょうか。これにはキャリアに対する考え方が大きな影響を与えています。仕事の経験・実績、顧客・会社からの評価、肩書をキャリアとするのであれば、そうでしょう。これはキャリアを職業経験の「結果」と捉えているのです。
 しかしながら、最新のキャリア理論であるプロティアン・キャリアに基づくとキャリアは職業経験の結果に限定されません。キャリアは「結果」ではないのです。(※「プロティアン」田中研之輔 著)キャリアは生涯を通じたその全ての過程を指します。
ワーク・キャリアの形成に焦点を当てることは大事なことです。ですが、キャリアはあなたのライフ・キャリアも含めた双方のキャリアを指すものなのです。このことにすでにお気づきではないですか?

得たもの・失ったもの

 少し私の話をさせてください。私は幸いにも3人の子宝に恵まれることができました。今も絶賛子育ての真っ最中です。一時は不妊治療に悩み、子どもを諦めていたんです。そんな経験を経て授かった子どもたちの育児に私自身が関わらないという選択肢はありませんでした。私は2回の育休(それぞれ10ヵ月程度)、時短勤務で子育ての時間を設けています。この関わり方を選択できることに会社と関連する方々には感謝しかありません。
 さて、この選択によって私が得たと思っているもの、失ったと思われるものは何でしょうか。整理してみます。
 得たと思っているもの:家族みんなが体健やかで心穏やかな環境とその環境づくりへの確かな貢献、新生児・乳児・幼児期の育児の実態に対する経験に基づく理解、子育てと仕事の両立の実態に対する経験に基づく理解、子育て世代とのネットワーク
 失ったと思われるもの:削った時間で貢献できたであろう成果とその成果に対する評価、月数万円の収入

 いかがでしょうか。私個人の観点ですので偏りはあるでしょう。ですが、人生100年時代に私にとって大事にしたいものが得られているのです。

蓄積されているもの

 得たと思っているものはビジネスとの関連がない、もしくは薄いと思われるかもしれません。直接的にはそうかもしれません。とは言え、全く活かせることができないかと問われたら、答えはNOです。子育てをする過程でビジネスに活かすことのできる経験、スキル・知識などが蓄積されています。それは次のようなものです。

未来への高い関心
未知への挑戦
失敗から学ぶ
変化への適応
多様な個の尊重
やりたい気持ちを引き出す働きかけ
観察力
受容力
段取り力・調整力
やりぬく力

 未来への高い関心は子を思う親心と言えます。親としての覚悟と言ってもいいかもしれません。それは本気で今に向き合う覚悟でもあります。私は「今」の仕事で未来を創っています。私にとっての仕事の意義・目的が大きく変わりました。
 子育てとはそれそのものが未知の体験です。私の実体験上、これは少なくとも3人目まではそうでした。4人目以降のことはわかりません。3人目であっても、上の子が2人いる状態ではそれまでと同じようにはやっても上手くいかないことが本当に多いです。やって当たり前、できて当たり前のことではないのです(奮闘中のお父さんお母さん、お歴々のお父さんお母さんには本当に頭が下がります)。特に新生児・乳児期は驚く早さで成長します。多くの失敗をしながら劇的な速さで改善し、子どもの成長の早さに一所懸命ついていきます。
 どうか自信を持ってください。子どもの成長とともに親も確実に成長していますから。

あなたはどうしたいか?

 子育ての過程で現代の日本で必要性が叫ばれている「力」の多くが鍛えられ、身につけられます。あとはこのことに気づいて、ビジネスの場での活用方法を考えるだけで実行に移せるはずです。
 プロティアンではキャリアを「生涯を通じた過程の蓄積」と捉えます。子育てはキャリアにブレーキをかけるものではありません。もしあなたが子育てによってブレーキがかかっていると感じているとしたら、それはあなた自身のキャリアに対する考え方によるものかもしれません。少し考え方に幅を持たせることで自身の行動の意味・意義が大きく変わってきます。ワークとライフを統合させる、ワークライフインテグレーションの考え方そのものです。
 最後に、これを問いかけて終わります。「あなたはどうしたいですか?」ぜひ今一度、価値観を整理、必要ならば更新した上であなたの人生と子育ての関係性を考えていただけますと幸いです。

碓井 英司

碓井 英司

会社員/キャリアコンサルタント(企業領域)
小学校PTA副会長/消防団員
夫/3児の父
プロティアン認定メンター、ファシリテーター
https://protean-career.or.jp/license/license-holders#

一人ひとりの「らしさ」にあふれる社会をつくるため、個人と個人、個人と組織、組織と組織の関係性をより良くすることにチャレンジしています。関係性の改善が「らしく」いられる場づくりにつながると信じて。

Twitter https://twitter.com/usuieig

プロティアン・キャリア協会からのお知らせ