自己理解を促進する7つのキーワード

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プロティアンキャリアと自己理解

プロティアンキャリアの理論では、キャリア形成における2つの重要な要素が示されています。それは「自分らしさとは何か」というアイデンティティと、変化する社会や組織にどう対応するのかというアダプタビリティです。

自己理解はこのうち、前者のアイデンティティに強く関係しています。アイデンティティが十分に確立されていない状態で、社会の変化に追いつこうとする努力をし続けると、どうなるでしょうか。この場合、ただ社会の変化に振り回されるだけで、本人の頑張りのわりには充実の実感が得られにくくなる可能性があります。充実した人生を送るためには自分らしさに向き合い、自己理解を通してアイデンティティを確立することが必要になります。そこで今回の記事では、自己理解で重要な7つの考え方を紹介させていただきます。

7つの柱

もし、何のガイドラインもない状態で「自分とは何者か」「自分は何がやりたいのか」という問いを自分自身に投げかけたとしたら、どうなるでしょうか。人によりますが、さまざまなことが頭の中に浮かび、まとまりのない混沌とした状態になってしまうだけかもしれません。これからご紹介する考え方は、そういった自分探しの堂々巡りから解放されるのに大いに役立つことでしょう。

この考え方は、アメリカの組織心理学者であるターシャ・ユーリック氏がその著書『insight』の中で「インサイトの7つの柱」として紹介しているものです。自分自身を理解する能力に長けた人々は、この7つの要素をよく理解しているということが、研究によって明らかになっています。

1)価値観:自分の行動指針となるキーワード
アメリカ創成期の政治家、ベンジャミン・フランクリンは「勤勉:時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし」など、計13個の行動指針を打ち立て、日々の行動をふり返るようにしていました。価値観は子供や後継者を育てるときに伝えたいこと・伝えたくないことと強く関連しています。また、こんな風になりたいと思う人やキャラクター、あこがれる人について考えることでも理解が深まります。

2)情熱:好きなことや、愛をもって行うこと
仕事やプライベートにおいて、いくらやっていても飽きないこと、なくなったら恋しくなることです。趣味もそのひとつでしょう。何があれば、朝ワクワクしながらベッドから飛び起きることができるでしょうか。

3)願望:人生をかけて体験したいことや、成し遂げたいこと
情熱は単純に好きなことですが、願望はより広く、人生そのものに何を求めるかです。願望は目標ではなく、人生を通して何を経験したいかというプロセスです。また、達成したら終わりの目標と違って、完全に達成されることのないものです。

4)環境:自分が幸せを感じ、全力を出し切ることができる場やコミュニティ
理想の環境は、これまでに説明した価値観や情熱、願望と密接に関わっています。自分が力を出し切れる職場や学校、空間、街にはどのような特徴があるでしょうか。逆に、思うように力が出せないのはどのような環境でしょうか。

5)性格:自分自身のよくあるパターン
例えば、怒りっぽいというのは感情のパターンになります。他にも、人には行動のパターンや思考のパターンがあります。自分のパターンを知ることで、良くない傾向が表れたときの対処法を考えることができるようになります。

6)能力:性格(パターン)と同じように思考や感情、行動となって表れるもの
あなたの思考には、どのような長所と短所があるでしょうか。あなたの感情には、どのような長所と短所があるでしょうか。あなたの行動には、どのような長所と短所があるでしょうか。それほど努力をしなくてもできてしまうこと。また他の人よりうまく、あるいは早くできることに目を向けることで、自分の長所が見えてきます。

7)影響:自分が周りの人に与える影響
他者の考えや感情を想像する力を磨くことで、自分の行動が周囲にどのようなインパクトを与えているかを把握できるようになります。職場やプライベートで自分が関わりを持っている人を想像して、どのような関わりをしているかを思い出してみましょう。

私と自己理解

私は現在大学生ですが、大学に入学したときに「自己理解を深めること」を4年間の目標として定め、今日まで様々な探求を続けてきました。最初のうちは自分自身に何を問えばいいのか分からず迷走していましたが、7つの柱の考え方を知って、自分の考えを整理できるようになりました。例えば私の場合、「自分の軸はなんだろう」と考えるだけでは、好きなことや成し遂げたいこと、これまでに経験して嬉しかったことなどが頭の中で乱立して「どれが本当にやりたいことだろうか」と混乱してしまいました。しかし、7つの柱で自分の考えを整理することで「これは自分の価値観で、これは願望」、というように思考の整理ができるようになりました。まだ自分自身、7つの柱のそれぞれについて完璧な答えを出せてはいませんが、一生をかけて自分をブラッシュアップしていくことを大切にしようと思います。

アイデンティティの確立へ

7つの柱について、いきなり明確な答えを出すことは難しいかもしれません。しかし、この7つのキーワードを押さえておけば、人生を通して自己理解を深め、自分らしさの確立がしやすくなるのではないでしょうか。自己理解は、自分自身を知る行為であるのと同時に、自分が他人にどう見えているかを知る行為でもあります。他人からの視点が自分のイメージと違っていたり、自分自身の中に矛盾することが生まれたりすることもあるかもしれません。そんなときは、唯一絶対の真実を探すのではなく、自分には様々な見え方があるという前提に立って、ありのままの自分の姿を受け入れ、気づきを得るといいでしょう。

自己理解によってより多くの人のアイデンティティが確立され、人生が豊かになることを願っています。

西尾 太一

法政大学キャリアデザイン学部在学中。高校生のときに通信制N高等学校に転校し、学生団体ActAichiを設立。現在は大学生としてキャリアや人材育成など人について学ぶことに注力している。マイビジョンは「楽しく働く人・楽しく生きる人があふれる世界。」
個人HP https://taichinishio.wixsite.com/nishio
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