50代に伝えたいキャリア・シフトの着眼点

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以前私の書いたコラム「70歳まで働き、100歳まで生きるための50代からの自律的キャリア形成」を読んだ方から、以下の様な感想を頂きました。

・55歳を迎えて今後の働き方、生き方を主体的に考え行動していたことが、ライフシフトにつながっている点が面白い。
・セカンドキャリアやライフシフトというと、大きな変化が必要と思われがちだが、三田さんの事例を見ると、「じわじわと」変幻というのが次につながる要因だと思った。
・それであれば他の人でも活用できる視点や行動なので、これから定年を迎える50代の参考になる。

私は、昭和時代の典型的なビジネスパーソン

こうした大変ありがたいお言葉を頂戴した私ですが、私は昭和32年生まれ、1980年入社の典型的な昭和の人間です。入社以来、キャリア自律に対する心構えや強いキャリア意識もなく、企業主体のキャリア形成施策(階層別研修・異動・転勤・昇進・・・)を受動的に受け入れて長年過ごしてきました。
実際にラインマネージャーから外れた時も、心の中では「次の職場はきっと会社や上司がなんとかしてくるだろう・・」と期待していました。然しながら、現実はそんなあまい話ではなく、「私は何から行動し始めたらよいか・・」など、将来に対する漠然とした不安を抱きました。

本コラムでは、50代の私が役職定年・定年退職という転機にとった選択と変化の内容と、これから定年を迎えるミドル・シニアの皆さんへのキャリアプラン作りのポイントについてお伝えします。

私を応援してくれる キャリアコンサルタントとの出会い

そんななか、私の転職活動を親身になって支援してくれるキャリアコンサルタントMさんに出会ったのは、私が初めて転職の相談に行ったA社の「キャリア相談室」でした。私はMさんとの対話を通じて、今後は今まで経験のある「民間IT企業の営業職」ではなく、「企業や住民の支援をする公共的な仕事」に関わりたいとう自分の「キャリアイメージ」を描くことが出来ました。

役職定年を控えたミドル・シニアの実態

    ―「ミドル・シニアの躍進実態調査」よりー
株式会社パーソル総合研究所/法政大学 石山研究室「ミドル・シニアの躍進実態調査」によると、役職定年を控えたミドル・シニアが行なっていた事前準備として最も多かったのは「備えとして行っていたことは特にない(33.2%)」、続いて「役職退任後については極力考えないようにしていた(22.2%)」で、迫り来る「役職退任後の自分」を意識的に遠ざけたいという心理的な抵抗を見て取ることができます。

一方、役職定年後の躍進を握る鍵は「事前の準備」でした。
具体的には、「役職定年後の具体的なキャリアプランを考える」、「仕事に対する考え方を見直す機会を持つ」ことがポイントです。つまり決して遠い将来ではない役職定年後のキャリアから目を背けず、「社内ポストに依存しすぎない働き方やキャリア意識への転換」を図ることが必要なのです。そして自ら「専門性を深める・広げる」、「人脈を広げる・社外活動に取り組む」、「副収入を得るための副業」などに取り組んでいました。
【役職定年後の変化に対する事前準備】

出所:https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201809200001

じわじわと変幻のきっかけは、「役職定年」と「社外への転出(出向)」

◇役職定年【定年後に向けた準備の始まり】
私が自分のキャリアを真剣に考える契機となったのは、57歳の「役職定年」を迎えた時です。その日を境にそれまでの会社人生で積み上げてきた自分のキャリア(収入、役割・責任、業務内容)イメージが目に見える形で変りました。それは来る60歳定年を前に「管理職からプレイヤー」へのキャリア転換と自分の働く居場所(社内・社外)を考えるきっかけになりました。
◇関係会社外への出向【定年後に向けた移行期間】
その後の私のとった選択と行動は、「前回のコラム(※)」に書いた通りです。定年前に長年勤めていたA社に籍を置きながら、B商工会議所という社外組織で、「人材開発」という新領域のキャリア(経験)を蓄積することが出来ました。その2年半は、60歳定年後も”自分らしく働く居場場所”作りとその為の能力開発という、定年後に向けた移行期間となりました。

自律的キャリア形成と50代からのキャリア・シフトチェンジ

キャリア自律とは、「自らの生き方、働き方を自律的に考え、キャリア設計を行い、主体的に行動し、能力開発を行うこと」といわれています。
しかしながら、キャリアについて考える機会が無く、会社の指示に従って働くことが良しとされていた時代を懸命に通ってきた今の50代の多くは、私がそうだったように「役職定年や定年後再雇用など将来に対する漠然とした不安を抱えながらも、どのように考え、実際に何から行動し始めたらよいか分からない」のが実態ではないでしょうか。

【50代からのキャリア形成の軌跡】
既に役職定年~定年退職・転職を経験した人の具体的な事例があれば、これから(役職)定年になる50代が自分の将来のキャリアをイメージする参考になると考えます。
そこで今回私は、「前回のコラム(※)」で紹介した「私のキャリア形成の軌跡」の内容に、ライフイベントに伴って変化していったキャリアの実態(働き方・待遇・職務等)を追記して編集しました。

シニアが定年後も生き生きと働き続ける為のポイントは、「事前準備」

 前述した「ミドル・シニアの実態調査」で指摘された「”役職定年後”の活躍を握る鍵」の視点で、私の定年前(55歳以降)のキャリア形成の軌跡を見てみると、私も同様の行動をしていたことが分かりました。だから、私も定年後も生き生き働き続ける為には、早め目の「事前準備」が重要だと考えます。
私が実際に行ったことを書き出してみると以下のようになります。

◇(役職)定年後のキャリアプランを考える
・キャリアコンサルタントに相談しながら将来のキャリア・ビジョンを描き、定年後を見据えた社外転出(出向)を決意
◇仕事に対する考え方を見直す
・外的キャリア(地位・金銭)から内的キャリア(心理的成功)へのキャリア意識の転換
◇専門性を深める・広げる
・人材開発(ジョブ・カード施策を含む)や組織開発分野の能力開発
・国家資格(キャリアコンサルタント)の取得
◇人脈を広げる・社外活動に取り組む
・キャリア関連や組織開発関連コミュニティへの参画による人的ネットワークの拡大
◇副収入を得るための副業などに取り組む
・ビジネス経験と資格(キャリアコンサルタント)を活かした副業の実施

まとめ 変幻自在なキャリア形成に向けて

 入社以来35年間正社員として同じ会社で働いてきた私にとってこの直近の7年間は、自分の「働く場所(会社)」や雇用形態(正社員・契約社員・パート社員)、勤務時間、待遇(年俸・月給・時間給)、職務内容などの「選択」と、それに伴う「新しい学び」の連続でした。
また57歳で迎えた役職定年という節目は、「社内ポストに依存しすぎない働き方やキャリア意識への転換と学び直し」のきっかけでした。
そして私は今も、環境の変化を前向きに捉え自らの意志と決断により、変幻自在なキャリア形成をし続けています。

50代の皆さん、変化を怖がらず、先ずは組織を超えた第一歩を! 
キャリアはいつからでも開発可能です。Be Protean!!

三田 勝彦

三田 勝彦

国家資格 キャリアコンサルタント、組織キャリア開発士、CSCワークショップインストラクター
大手IT企業に35年間勤務し、その間法人向けのシステム営業と全社マーケティング業務を担当。その後東京商工会議所にて、厚生労働省委託業務の「ジョブ・カードを活用した人材開発施策(実践型訓練、職業能力評価基準、セルフ・キャリアドック)」と助成金普及促進業務に従事。
現在は、企業におけるキャリア形成・人材開発・組織開発をテーマにしたコンサルティング、研修講師に従事している。
好きな言葉:A・T・M(明るく 楽しく 前向きに)

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