コミュニケーションにおける変化と不変

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最近、コミュニケーションに関する研修やセミナーの依頼を受けることが多くなってきました。社員間のコミュニケーションに課題を感じている企業が多いようです。時代の変化によってコミュニケーションの在り方も変化しているように感じます。しかし、コミュニケーションの形が変化しても、変わらない大事なことがあるとも感じています。円滑に周囲と意思疎通を取ることは、仕事を前に推し進めるためにも非常に重要です。今回は、コミュニケーションをテーマに、周囲を巻き込み主体的に仕事を進めるヒントをお伝えします。

コミュニケーションとは

広辞苑によると「社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達」
あります。一般的には情報の伝達だけが目的ではなく、意思疎通によって互いに理解
し合うこともコミュニケーションの大きな目的なのです。こうしたことを踏まえると、自分の考えや意図を伝える力が必要ですし、あわせて相手の考えや意図を受け取る力も必要です。

コミュニケーション能力とは

 コミュニケーション能力が高い、低いという表現を聞くことがあります。コミュニケーション能力とはどういった能力のことなのでしょうか。コミュニケーション能力には2つの力があります。まず、1つ目の力は「伝える力」です。そして伝える方法には、「言語」と「非言語」の2つありがます。つまり言葉で伝える方法と、ジェスチャーや表情、態度などで伝える方法です。

言語によるコミュニケーションのきっかけは挨拶です。私が実施する研修では、コミュニケーションをテーマとした研修かどうかに関わらず、新入社員研修でもリーダー研修でも挨拶の重要性について必ずお話しします。なぜなら、挨拶の良し悪しで、第一印象の良い悪いに繋がり、ひいては今後の人間関係にまで影響することがあるからです。初対面であっても笑顔で元気よく挨拶を交わすことができれば、その後の会話や商談はスムーズに進む可能性が上がります。「あなたとの意思疎通O Kですよ」のサインとも言えます。これは、上司部下の関係や家族・友人関係、お客様との関係、どんな人間関係でも通じるものです。言語でどのように伝えるかのテクニックの前に、実は挨拶による信頼関係の構築、コミュニケーションの基盤の形成が重要です。

もう一つの伝える方法、非言語によるコミュニケーションについてですが、視覚的要素(見た目、表情、顔色、視線など)と聴覚的要素(声のトーン、大きさ、話すスピード、身振り手振り、しぐさなど)があります。実は、伝える力は言語よりも非言語的要素の方が重要である場合も多いと言われています。
非言語コミュニケーションの具体的な効果を検証した「メラビアンの法則」をご存知ですか。アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンによって提唱された説で、人はコミュニケーションにおいて人の感情を読み取る際、以下の割合で情報を受け取っているとの実験結果を明らかにしました。

※グラフは、メラビアンの法則をもとに、筆者が独自に作成。

メラビアンの法則によると、話の内容は7%とされており言語だけで感情や気持ちを伝えることは難しく、言語と非言語を一致させることが円滑なコミュニケーションを図るポイントだと言えそうです。例えば、明日の出勤時に声のトーンをいつもより少し上げて笑顔で「おはようございます」と挨拶してみて下さい。きっと周りからも明るい挨拶が返ってくるようになりますよ。

 次に、2つ目の力「受け取る力」についてです。こちらも受け取る方法が2つあります。1つは「聴く」です。この「きく」という言葉ですが、使用する漢字によって意味が異なります。

コミュニケーション能力の「受け取る力」に必要な「きく」は漢字で表すと「聴く」になります。特に傾聴(耳を傾けて熱心に聴くこと。相手の気持ちに寄り添って、注意深く共感的に聴くこと)のスタンスが重要です。
2つ目は「汲み取る、読み取る」です。その場の空気や雰囲気を読み取る、相手の先を読む、感情を汲み取るなどが当てはまります。これは日頃から、周囲への目配り、気配りが出来ているかがポイントになります。

コミュニケーション手段の変化によって変わっていくこと

コミュニケーション能力には「伝える力」と「受け取る力」の2つがあることをお伝えしました。しかし、時代の流れによってコミュニケーションの手段は変化しています。SNSの普及による間接的なコミュニケーションが主流となり、伝え方も受け取り方も変わってきました。ビジネスシーンでも、コロナの影響でオンラインでの会議や商談が増え、取引先とのやり取りもメールではなくチャットツールを利用することが多くなってきました。オンラインでの会議や商談には、移動や出張のコスト削減、顧客対応をスピーディーに行えるなどのメリットがあります。その一方で商談相手との関係構築が難しい、場合によっては資料共有が情報漏洩に繋がるリスクなどのデメリットもあります。このようにコミュニケーション手段が変化することで、ビジネスマナーや求められるビジネススキルも変化していくことになります。当たり前はその時々で常に変わっていくものと考え、メリットを活かし、同時にデメリットを補う方法を考えながらコミュニケーションを構築していく必要があります。

まとめ

 コミュニケーションは意思疎通であり、手段が変わってもお互いを理解するという目的は変わりません。そして、人間関係を良好にし、ものごとを推し進めるには円滑なコミュニケーションが大切です。手段に関わらず、まずは挨拶などの基本的な信頼構築が基盤となりますし、相手に不快感を与えない配慮や話し方は常に必要です。直接会う機会が少なくなったからこそ、今まで以上にコミュニケーションの取り方や相手への配慮などを考える必要があります。周囲との良好な関係を築いていくためにも、健全で良質なコミュニケーションを図れるようにしていきたいですね。

篠田 幸

総合人材サービス会社勤務
営業職から人材教育部門に異動したことをきっかけに、採用・研修・教育の業務に携わる。
営業職、事務職、薬剤師、福祉専門職と幅広い採用、教育に関わり約15年。
現在は、セミナー・研修講師(新入社員、階層別研修など)、求職者支援訓練などを担当。
国家資格キャリアコンサルタント

Twitter https://twitter.com/myk_snd

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